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パイクスピークってなんですか?

正式名称を、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムと言い、アメリカ・コロラド州で開催される世界最大のヒルクライムイベントです。
コロラド州の州都デンバーから南へ約100キロ、コロラドスプリングスに程近いパイクス山の観光道路を舞台に、年に1回だけ、アメリカ独立記念日である7月4日(あるいは、それに近い週末)に開催されます。その歴史は古く、第1回の大会は1916年に開催。途中、第2次世界大戦による中断もありながら、2006年で実に90周年、84回目の大会となりました。これは、単一シリーズとしては世界最古の歴史を誇るインディ500マイルレース(1911年〜)に次ぐものであり、アメリカにおける格式の高さは「ロードのインディ500、ダートのパイクスピーク」と言われるほど。

レースは、標高2,862mのスタート地点から4,300mの山頂までの高低差1,400m、コース全長20kmを一気に駆け登り、そのタイムで勝負が決まります。
以前は、路面のほとんどがダートでしたが、近年は舗装が進み、2006年の時点では3分の1程度が舗装となっています。コーナーの数は156箇所、200km/hに迫る高速コーナーから60km/h以下でまわるヘアピンまで、あらゆるタイプのコーナーが存在しています。しかも、ガードレールは極めて少なく、コースアウト=致命的な状況となります。さらに、ゴールに近づくにつれ気圧の変化や酸素量の減少などが、マシンとドライバーを苦しめることになります。

そして、競技形態も特殊です。練習走行は、トップセクションとボトムセクションに分割され、2日間に分けて、それぞれを数本走行することができます(以前は、3分割を3日間)が、決勝までフルコースを走行することは無く、20kmのフルコースを走行することができるのは、決勝1本だけなのです。

また、多彩なマシンが走行するのもパイクスピークならでは。バイク、サイドカー、クワッド(4輪バイク)、バギー、ラリーカー、EV、オープンホイール、そしてアメリカならではのストックカーにトラック、果てはトレーラーヘッドまで、あらゆる車両が参加します。
この中で、総合優勝を争うのがオープンホイールとアンリミテッドです。オープンホイール・ディビジョンに属する車両の中でも、インディカーをベースに車高を調整し空力装置を大型化したものが非常に速く、我々の強力なライバルになります。また、エスクード・ヒルクライムスペシャルが属するアンリミテッド・ディビジョンは、その名の通り「改造無制限」です。但し、パイクスピーク・ヒルクライムの安全基準は厳しく、これに準じたものでなくてはなりません。


 

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2006年のレースはコースが短縮されたそうですが、なぜですか?

パイクスピーク・ヒルクライムは、標高の高い地点で行なわれるために天候が変りやすく、特に、トップクラスの選手が走行する午後には、非常に不安定な状態となることが多いのです。今回のレースでも、スタート付近では晴れていたにもかかわらず山頂付近では雪が積もり、ポップコーン大の雹が降るような天候となってしまいました。このために、トップセクション(山頂付近)の走行はあまりにも危険(オープンホイールクラスはドライバーがむき出しですし、通常の車両でもフロントウインドウ破損の危険がある)とあって、最終的にレースはコース全長の約3分の2を使う短縮コースで行われる事となりました。
ちなみに、1995年にも同大会79年間の歴史の中で初めて降雪による短縮コースで開催されていますが、この大会でもモンスター田嶋が総合優勝しています。表彰式では、モンスター田嶋が「このショートコースのレコードは、あと79年のあいだ破られることはないだろう」とジョークを飛ばしていますが、まさか、数年後に自らが破ることになるとは...

 

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優勝おめでとうございます。ところで、2006年のエスクード・ヒルクライムスペシャルはニュージーランドのときと比べてどう違うのですか?

ニュージーランドのヒルクライムに参戦を続け完成の域に達したマシンをさらに進化させ、パイクスピークのコースに適するようモディファイを加えています。
具体的には、
(1)ダートと舗装が混在するコースで安定したドライビングができるように、扱いやすいハンドリングとエンジン特性に仕上げています。
(2)より大径で安定したグリップが得られるタイヤ(ファルケンS/TZ04 285/60R18)を納めるためにフェンダーアーチを拡大。
(3)舗装路面とフラットダートの多いコースに合わせ、車高を大幅に下げています。


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エスクード・パイクスピークスペシャルは、最高速はどれくらい出ますか?

平地の舗装路での最高速は未計測ですが、2006年のレースではモンスター田嶋の自己最高記録を塗り替えて、127マイル(約200km/h)を記録しました。
その走行シーンは、ダンロップファルケン株式会社のWEBサイトで動画が公開されていますので、ぜひご覧になってください。

http://www.falken2.jp/m-sports/pikespeak/index.html

※最高速は、ギヤ比や空力装置の仕様によって大きく変化します。上記の数値は、あくまでもパイクスピーク実戦時の数値となります。




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ニュージーランド(レース トゥ ザ スカイ)のレポートでも書いてありましたが、タイヤのグルービングとは何ですか?

タイヤのグルービングとは、タイヤのトレッド面に対して溝を追加して、タイヤをチューニングすることです。パイクスピークでは気象や路面の状態から、モンスター田嶋とチームの経験を生かしてグルービングを施しています。

 


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パイクスピークでは、舗装路面と、未舗装のダート路面の両方を走るとのことですが、マシンのセッティングはどちらに主眼を置いて行なっているのですか?

舗装路面からダート路面まで、路面が様々な表情を見せるパイクスピーク・ヒルクライムでは、どちらかに特化したセッティングでは、好タイムを得ることができません。エスクード・ヒルクライムスペシャルでは、タイムの差が出やすい未舗装路面を重視しつつ、舗装路面のタイムが著しく悪化しないようにセッティングのバランスを取っています。


 



標高の高いドライブコースを走るときにはパワーダウンを感じますが、エスクード・ヒルクライムスペシャルが、空気の薄い高山を走るときに施す特別なセッティングなどがあるのでしょうか。

富士山の7合目とほぼ同じ高さからスタートするパイクスピークでは、気圧が低く酸素が薄いために平地と比較してパワーが出にくくなっています。
エスクード・ヒルクライムスペシャルでは、気圧が低い高山でテストを行い、ターボチャージャーの容量の選定や、気圧に対して最適な過給圧制御を行なうことで効率的にパワーを得ています。

また、気圧が低いために空力装置の効力も減少しますので、前後のウイングを可能な限り大きくし、車体下面の空気の流れでもダウンフォース(車体を路面に押さえつける力)を得る仕組みとしています。


 



ウィングに大きく入っている POWER FILTER って何ですか?

レースや世界ラリー選手権で使用される、世界的なスポーツエアフィルターで、テクニカルサポートを受けています。パイクスピーク・ヒルクライムでは、新タイプの製品のテストも行われました。

http://www.powerfilter.com


 



一般的に、標高の高い所では歩くだけで高山病になったりしますが、パイクスピークに挑むドライバー達は特別なトレーニングや準備を行うのですか?

高地走行に向けて、水泳など心肺機能を高めるトレーニングを特に入念に行います。また、コースに対する習熟と身体を高地に慣らすため、早めに現地入りして徐々に身体を慣らします。プラクティス(練習走行)は、2日間全て参加しなければなりません。さらに、レース前には入念なメディカルチェックを受ける必要があり、特に、高血圧の場合などは危険な度合いが高まります。

装備については、ライフサポートシステム(車に設置した酸素ボンベから酸素を口元に供給する)を装着したヘルメットを使用します。
トップクラスのドライバーは、1400m以上の標高差を約10分で駆け上がるために、その運動量に対して、酸素量が絶対的に不足します。これは、判断力の低下を招き非常に危険な状態を招くのです。実際に、ゴール手前の、なんでもない緩い高速コーナーで意識が朦朧とした状態となり、コースアウトした選手もいます。

この項の回答:モンスター田嶋





モンスター田嶋選手とモンスタースポーツ/スズキスポーツは、なぜパイクスピーク・ヒルクライムにに出場し続けるのですか?

まずは、ドライバーとして。
雄大な自然を舞台にしたコース、毎年変わる路面状況や刻々と変化する天候など自分自身の体制を万全に整えても思い通りに行かない、自然を相手にする難しさ。1999年には、私が山の尾根を走行中に正面から突風が吹き、車に予想外のダウンフォースが掛かり、車体下面を路面に打ち付けてしまいました。これによって、カウルを破損しスローダウンを余儀なくされました。そこまではトップタイムで走行していただけに悔しい事件でした。通常のレースでは考えられない事ですが、難しいレースであるだけに非常にチャレンジしがいがあるのです。

また、スズキスポーツ代表としては、アンリミテッド(改造無制限)クラスが設定されている事でしょうか。F-1、WRCを始めとするほとんどのカテゴリのレースは、規則によって車両の寸法や排気量、改造範囲などが細かく決められていますが、パイクスピークでは、安全基準を満たせば他の項目がフリーなアンリミテッドクラスが設けられています。このクラスでは、自由な発想による車造りを行うことができ、エンジニアのアイデアと技術力が試されると言えるでしょう。

我々は、間もなくWRCのトップカテゴリーに参加を開始しますが、パイクスピークで培った、4輪駆動制御技術、ターボ制御を含むエンジン技術、エアロダイナミクス(空力)技術を持っていた事が、スムーズかつスピーディにWRカーの開発が進んでいる理由になっていると言えます。

この項の回答:モンスター田嶋